初めて目にしたときは、正直ちょっと嫌悪感が生まれました。「キモチわるい」と思ってしまいました。
ですが、個人的な感情を一旦忘れて、どういったものなのか考察してみましょう。
デジタル・シャーマン・プロジェクト(Degital Shaman Project)とは?
『デジタルシャーマン・プロジェクト』では、科学技術の発展を遂げた現代向けにデザインされた、あたらしい弔いの形を提案しています。現段階では家庭用ロボット「Pepper」に故人の人格、3Dプリントした顔、口癖、しぐさを憑依させたものを開発しました。このプログラムは死後49日間だけPepperに出現し、49日を過ぎると自動消滅します。「Digital Shaman Project」より
公式サイトには、上記のように記載されています。
上の写真のように、ソフトバンクのPepperに、3Dプリンターで製作したマスクを装着して、故人のように振舞わせます。
言葉やしぐさは事前に、本人への取材によってプログラミングしておきます。
ですから、完全ではないとはいえ、顔と声・しぐさは本人に近いものになります。
このプロジェクトの意味は?
死後、四十九日までの間、故人の人格を移した(写した?)Pepperを故人として弔う新しいカタチの葬送儀礼といったところでしょうか。
Pepperに“イタコ”のような役割を持たせて、遺族を慰める行為だと動画中に述べられていますね。
これまで、遺族の慰めは宗教が担ってきましたが、現代においては科学がそれを担ってもいいのではないか、という挑戦的なプロジェクトですね。
宗教意識の希薄な日本らしい挑戦だと思います。
プロジェクトの賛否について
優秀賞を与えたことから、国(文化庁)は肯定的だと考えられます。
また、ネット上でも実際に間近で体験してみると、「マスクと声の効果が強く、違和感は感じない」など、肯定的な意見も多いです。
ただ、もちろんともいえますが、否定的な意見も多数あります。
見た目に関することが多く、「故人をバカにするな」という意見もありました。
私自身もそうでしたが、マスクが取り付けられたPepperのインパクトが凄すぎて、拒絶反応が先に立ってしまうのではないでしょうか。
私が見た中では、賛より否が多いように感じました。
心情的な問題より、見た目的な問題への反発が多かったので、全身の精巧なコピーができれば、賛の声が増えると思います。
このプロジェクトは普及するか?
もともとは“イタコ”をヒントに作られたようですが、
筆者自身の感想としては、
これらの行為に“遺族を慰める”や“故人の想いを残す”といったような、これまでの葬儀に込められていた意味はないように思います。
元々取り組んでいた『テクノロジーとアートの融合』、モチーフとして扱っていた『死』というものを組み合わせた結果、出来上がった作品ではないかと。
つまりは、宗教的観念は関係なく、ただの作品だと感じました。
その辺りが表面に見えてしまっている現段階では、このプロジェクトは失敗しそうです。
「人の尊厳を守る」といった、いわゆる『道徳』に反するため、個人の感想はさておき、表立って応援できないという状況が予想されるためです。
国としても、『道徳教育』への注力をお題目に掲げているので、表立って応援できなくなると思いますが…優秀賞取り下げとか、何年も後になって言い出さないといいですね。
ただし、いくつのかの記事やインタビュー動画も見ましたが、これはまだ“実験”の段階のようなので、まだまだ期待値を残しているプロジェクトです。
今後、持続的に話題を作れなければ、どんなに進化・改善しても消え去ってしまうので、誰か追いかけてくれる人がいるといいですけどね。